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派遣薬剤師は「派遣会社の社員」、フリーランス薬剤師は「会社に雇われず、自分で仕事を受ける人」です。
名前は似ていますが、働き方はかなり違います。
派遣薬剤師は、毎月の給与を派遣会社から受け取ります。フリーランス薬剤師は、仕事を頼んだ薬局や会社から報酬を受け取り、税金や保険の手続きも自分で行います。
この記事では、派遣との違い、向いている人、始めるまでの5つの手順を、やさしい言葉で説明します。
最初に覚えたい2つの言葉
- 雇用契約:会社の社員として働く約束
- 業務委託:会社の社員にはならず、決めた仕事を引き受ける約束
派遣は会社員、フリーランスは自分で仕事を受ける人
「フリーランス薬剤師」は、法律で決められた資格名ではありません。
一般には、薬剤師の資格や経験を使い、会社に雇われずに仕事をする人を指します。自分で小さな仕事を営む人に近い働き方です。
派遣薬剤師は、派遣会社の社員です。給与は派遣会社から受け取りますが、毎日の仕事は派遣先の薬局から指示を受けます。
違いを簡単に比べると、次のようになります。
| 比べること | フリーランス | 派遣薬剤師 |
|---|---|---|
| 誰と約束する? | 薬局や会社 | 派遣会社 |
| 受け取るお金 | 報酬 | 給与 |
| 仕事の進め方 | 自分で決めるのが基本 | 働く薬局の指示を受ける |
| 有給・残業代 | 原則としてない | 条件によりある |
| 保険・年金 | 会社を辞めた場合は自分で手続き | 条件を満たせば派遣会社が手続き |
| 税金 | 自分で申告する | 会社の年末調整が中心 |
フリーランスは「好きな薬局を選べる派遣」ではありません。仕事探し、契約、請求、税金の手続きまで自分で行います。

「業務委託」と書いてあれば安心、ではない
契約書に「業務委託」と書いてあっても、実際の働き方が会社員とほとんど同じなら注意が必要です。
たとえば、次のような働き方です。
- 出勤する日と時間を薬局がすべて決める
- 頼まれた仕事を断れない
- 仕事の順番や進め方を細かく指示される
- 働いた時間だけで報酬が決まる
- ほかの会社の仕事をする余地がない
一つ当てはまっただけで、すぐに問題になるわけではありません。ただし、いくつも重なると、名前はフリーランスでも、実際は会社員に近い働き方かもしれません。
薬局には、患者さんの安全を守るための決まりがあります。そのため、薬局内の調剤をフリーランスとして受けてよいかは、自分だけで判断しないほうが安心です。
契約する前に、次の2か所へ仕事内容を伝えて確認します。
- 都道府県の薬に関する窓口(薬務主管課)
- 働き方に関する窓口(労働局)
相談するときは「業務委託なら大丈夫ですか」とだけ聞くのではなく、勤務時間を誰が決めるのか、誰から指示を受けるのか、報酬をどう決めるのかまで伝えます。
保険を使う調剤を担当する場合は、保険薬剤師の登録も確認します。
なお、病院や診療所で行う調剤への派遣は、原則として禁止されています。一部に例外がありますが、通常の調剤薬局への派遣とは決まりが違います。

自分で手続きを抱えたくないなら派遣を選びやすい
フリーランスと派遣は、どちらが上というものではありません。自分が何を負担できるかで選びます。
フリーランスを考えやすい人
- 受ける仕事と金額を自分で話し合える
- 請求書の作成や確定申告を自分でできる
- 月によって収入が変わっても生活できる
- 一つの会社だけに頼らず、複数の仕事先を探せる
薬剤師の知識を使った記事作成、研修資料の確認、会社から頼まれた医薬品関係の仕事などは、担当する範囲を決めやすい仕事です。
薬局内の調剤は、同じようには考えられません。先ほど説明した窓口へ、契約前に確認してください。
派遣を考えやすい人
- 働く日や期間を選びながら、会社員でいたい
- 給与や保険の手続きを派遣会社に任せたい
- 困ったときに派遣会社へ相談したい
- いくつかの薬局を経験してから次を考えたい
派遣でも、必ず社会保険に入れるわけではありません。働く時間や契約期間などの条件を満たした場合に、派遣会社を通して加入します。
私は派遣薬剤師として約3年働きました。職場が変わる大変さや、働いてわかったことは別の記事にまとめています。
関連:薬剤師派遣を3年経験してわかったメリット・デメリット【体験談】

フリーランス薬剤師になる5ステップ
先に仕事の内容と契約を決めます。退職や開業届は、そのあとです。
1. どんな仕事をするか決める
「薬剤師として何でもします」では、相手も仕事を頼みにくくなります。
たとえば、記事を書く、研修資料を確認する、医薬品の情報を整理するなど、引き受ける仕事を具体的にします。
「何をするか」「いくらで受けるか」「どこまで直すか」まで決めておくと、あとで話がずれにくくなります。
2. フリーランスとして受けてよい仕事か確認する
記事作成のように、完成させる物がはっきりしている仕事は、担当する範囲を決めやすいでしょう。
薬局の中で調剤をする仕事は別です。勤務時間、指示を出す人、報酬の決め方を整理し、薬務主管課と労働局へ相談します。
3. 仕事先を探し、条件を文章でもらう
知人の紹介、募集サイト、会社への提案などで仕事先を探します。
口約束だけで始めず、次の内容をメールや契約書に残します。
- 何をするか
- いつ、どこで行うか
- いくら受け取るか
- いつ支払われるか
フリーランスに仕事を頼む会社には、取引条件を文章やメールで知らせる決まりがあります。
4. 開業、保険、年金、税金の手続きをする
会社を辞めてフリーランスになる場合は、健康保険と年金の切り替えが必要です。
健康保険には、国民健康保険だけでなく、今の健康保険を続ける「任意継続」や、家族の健康保険に入る方法もあります。入れる条件と金額を比べてから決めます。
関連:薬剤師の退職後の健康保険はどうする?国保・任意継続・家族加入の比べ方
税務署へ出す開業届と、税金の計算で使える青色申告の申請書は、期限が同じではありません。
2026年1月1日以後に開業した場合、開業届は原則として、その年分の確定申告期限までに提出します。1月16日以後に開業して青色申告を使いたい人は、原則として開業日から2か月以内に申請します。
5. 小さく始め、毎月のお金を記録する
最初から一つの仕事だけで生活しようとすると、その契約が終わったときに収入がなくなります。
できれば副業や短い仕事から始めます。毎月、次の3つを記録してください。
- 入ってきたお金
- 仕事に使ったお金
- 仕事にかかった時間
会社で働きながら始める人は、会社の副業ルールも先に確認します。
関連:薬剤師のダブルワーク完全ガイド【禁止・バレる・確定申告まで】

仕事を始める前に、契約書で5つ確認する
表示されている報酬だけで決めると、交通費や追加作業の負担で「思ったより残らない」となることがあります。
少なくとも、次の5つは文章で確認します。
| 確認すること | 書いておく内容 |
|---|---|
| 何をする? | 担当する仕事と、どこまで行えば完了か |
| いくら? | 報酬、交通費、支払日 |
| 予定が変わったら? | 日程変更、キャンセル、途中終了の扱い |
| ミスが起きたら? | 誰がどこまで負担するか、保険で何を補えるか |
| 情報をどう守る? | 患者情報、資料、端末の扱い |
受け取る報酬が、そのまま手元に残るわけではありません。
健康保険、年金、税金、交通費、仕事道具などは自分で支払います。請求書の作成や打ち合わせなど、お金が出ない作業にも時間がかかります。
会社員のように、労災保険が自動で付くわけでもありません。ただし、会社から仕事を受けるフリーランスは、希望すれば労災保険に特別加入できる場合があります。仕事中や移動中のけがに備えたい人は、保険料と補償内容を確認します。
「インボイス登録をしてください」と仕事先から言われることもあります。登録は任意です。登録すると消費税の申告や事務作業が増えるため、内容を理解してから決めてください。

まとめ:開業届より先に、仕事と契約を確認する
まず覚えておきたいのは、派遣は会社員、フリーランスは自分で仕事を受ける人という違いです。
フリーランスには、自分で仕事を選べる面があります。一方で、仕事探し、契約、請求、保険、年金、税金も自分で行います。
特に薬局内の調剤をフリーランスとして受けたい場合は、契約書の名前だけで判断できません。仕事内容を具体的にし、薬務主管課と労働局へ先に相談してください。
「自由に働きたいけれど、手続きを一人で行うのは不安」という人は、派遣の求人と比べると、自分に合う働き方が見えやすくなります。

参考にした公的情報
- 労働者派遣・請負を適正に行うためのガイド|厚生労働省
- 労働者とは|厚生労働省
- 偽装請負について|東京労働局
- 労働者派遣事業を行うことができない業務|厚生労働省
- フリーランス法特設サイト|公正取引委員会
- 保険医・保険薬剤師の登録|近畿厚生局
- 開業する場合|国税庁
- 年金に加入する|日本年金機構
- フリーランスの労災保険特別加入|厚生労働省
※本記事は一般的な情報を整理したものです。個別の契約、薬局での働き方、税金については、労働局、都道府県の薬務主管課、税務署などへ確認してください。


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